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2022/04/28(木)
カテゴリー : -FAQ, 3.附則

条ずれを修正する改正の遡及適用の要否

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【お問い合わせ】

ある条例が法律を引用しているのですが、引用元の法律条文に繰り下がりの改正がありました。
ところが引用を修正することを失念しており、このたび引用を修正する条例改正を行います。
施行期日を「公布の日から施行する。」としたのですが、引用元の法律の当該条文の改正の施行期日は、すでに経過している令和4年4月1日です。
この場合、「この条例は、公布の日から施行し、改正後の第〇条の規定は、令和4年4月1日から適用する。」という遡及適用は必要でしょうか。

【弊社見解】

法不遡及の原則があるため、遡及適用は避けられるのが原則になります。
例外的に遡及適用が認められるためには、おおまかに①必要性、②許容性の点が満たされる必要がございます。

①必要性
必要性に関しては、明確な基準というものが存在しておりませんが、主に例規の改正の効果面からの検討することになります。
具体的には、該当条文の性質、その条文を過去に遡って修正することの重要性、影響度合いや緊急性など、改正による効果を総合的に考慮し、必要性を判断することになります。

これらの事情を考慮して、今回の条ずれを手当てする改正を遡及させる必要性を判断してみてください。

なお、条ずれの批判を回避するためや議会への説明の便宜のために遡及適用が必要であるというご意見が時折ございますが、こういった改正の効果とは全く関係のないご事情は、必要性検討の際に考慮することは不適切な事情になりますのでご注意ください。

②許容性
必要性を満たすと判断される場合には、次に許容性を判断することになります。
参議院法制局の資料によると、次のような場合には遡及適用を行うことが許容され得ることになります。
・国民(住民)の利益になる場合
・国民(住民)の権利義務に影響がない場合

条ずれを手当てする改正の効果が上記のあてはまるのであれば、許容されますが、かなり限定的な場合かと存じ上げます。