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2012/04/06(金)
カテゴリー : 1.一部改正

未施行の改正と当該改正とは別部分の改正が同日施行である場合の先後関係について

【ご質問】

平成23年6月議会で条例の別表改正(H23.12.1施行)を行い、平成23年9月議会で同条例の同表を改正(6月議会での改正箇所以外の改正、H23.12.1施行)を行う場合、9月議会の議案の別表は、6月議会で改正した箇所を反映させるべきか、又は反映不要とするべきか。どちらかの解釈が適切か。

【弊社見解】

「6月議会分の改正」と「9月議会分の改正」は別箇所の改正となりますので、未施行の一部改正(6月議会分の改正)と一部改正(9月議会分の改正)が並存する形となります。

同日施行である場合、観念的に6月議会分の改正が溶け込み、これに対して9月議会分の改正を行うとし、6月議会で改正した箇所を反映させると考えることができます。これは、次に掲げる未施行の一部改正の改正での考え方を類推するものであります。

特殊な例であるが、A法の一部を改正するB法が成立公布されたがまだ施行されていない段階で、A法の一部を改正するC法において、A法の同じ部分を改正しようとするとき、先に成立したB法での改正を前提として、換言すれば、B法によりA法の当該部分が改正され、A法に溶け込んだことを前提としてC法の改正規定を書けばよいかどうかの問題がある。

B法の施行とC法の施行とが同時である場合には、先に成立したB法によるA法の改正を前提として、C法においてA法の当該部分の改正をすることになる。

「ワークブック法制執務」(法制執務研究会編、ぎょうせい、p383~385)

なお、古い例とはなりますが、昭和37年に、 行政不服審査法と行政事件訴訟法が制定された際、 それに伴い、多数の法律改正を行うため、
①行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(a法)
②行政事件訴訟法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(b法)
が提案されました。

この場合、施行期日は同時でありましたが、 a法による改正が先に行われ、 その後、b法による改正がなされるものとして立案されました。

行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律をここに公布する。
御 名 御 璽
昭和三十七年九月十五日
内閣総理大臣 池田 勇人
法律 第百六十一号
行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律

附 則
1 この法律は、昭和三十七年十月一日から施行する。
10 この法律及び行政事件訴訟法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(昭和三十七年法律第百四十号)に同一の法律についての改正規定がある場合においては、当該法律は、この法律によつてまず改正され、次いで行政事件訴訟法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律によつて改正されるものとする。

行政事件訴訟法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律をここに公布する。
御 名 御 璽
昭和三十七年五月十六日
内閣総理大臣 池田 勇人
法律 第百四十号
行政事件訴訟法の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律

附 則
1 この法律は、昭和三十七年十月一日から施行する。

ところが、b法のみが通常国会で成立し、 a法は継続審議になり、次の臨時国会で成立となりました。 そこで、議員修正により、a法の附則に、
「a法及びb法に同一の法律についての改正規定がある場合においては、当該法律は、a法によってまず改正され、次いでb法によって改正されるものとする。」
という趣旨の規定が置かれました。

このような規定により、溶け込みの順序を変更できるのかという疑義も含め、この先例は、先述の文献とは異なることになります。

しかしながら、同時に施行される法令について、どちらが先に溶け込むということは決まってはいないものであり、 解釈に委ねられております。 そこで、このような規定を置けば、 解決になるということも考えられるところです。

改正規定が空振りとなって、もう一度改正を必要とするような手間をかけることがないよう、改正法令の趣旨を尊重して、溶け込みの順序についても、柔軟に解釈すべきものとも考えられます。

本ご質問の場合のように、9月議会の改正で、6月議会で改正した箇所を引くことが必要な場合も、解釈に紛れがなければ、9月改正後の規定を引用することもあろうかと思います。

どちらが適切か明確とは言えない部分がありますが、検討材料としていただければ幸いです。