臨時的任用職員等と給与条例主義に関しての対応事例のご紹介 (最判平22.9.10[茨木市]、大阪高裁平22.9.17[枚方市])
平成22年10月18日付けの弊社例規影響解説「臨時的任用職員と給与条例主義に関する判決(最判平22.9.10)の例規への影響について」にて、上記2つの判決をご紹介しております(判決内容の詳細につきましては、当該影響解説をご覧願います。)。
その中で、常勤としての性格を有する臨時的任用職員(茨木市判決)・非常勤職員(枚方市判決)に対し、条例に基本的事項を定めずに、給与・一時金等を支給されている場合には、裁判所に違法と判断される可能性が高いため、条例・規則等の改正の検討を行う必要があると思われる旨をあわせてご紹介致しましたところです。
【最判平22.9.10、補足意見】
臨時的任用職員の中には、常勤とまでは評価できないものの、勤務時間や勤務期間が長い者もいるであろうが、これらの職員に対し、生活給的な手当の性格を有する一時金を支給する現実的な必要性があることは理解できないではない。しかしながら、地方自治法204条は、議会の議員以外は常勤職員についてのみ法定の各種手当の支給を認めているのであるから、上記の性格を有する一時金を適法に支給するためには、当該職員の勤務実態を常勤と評価されるようなものに改め、これを恒常的に任用する必要があるときには、正規職員として任命替えを行う方向での法的、行政的手当を執るべきであろう。また、臨時的任用職員であっても、これらの職員に対する給与の額及び支給方法又はそれに係る基本的事項については、条例で定めるべきことが同法204条の2等で要請されているところであるから、その職が文字どおり臨時に生じた事務に係るものであっても、少なくとも給与の額等を定める際の一般的基準等の基本事項は条例に盛り込む必要があろう。そして、これらの対応のためには、当該地方公共団体の人的体制・定員管理の在り方や人件費の額等についての全体的な検討を余儀なくされる場面も生じよう。 本件における茨木市はもとより、以上のような要請を満たしていない地方公共団体においては、本判決の言渡し後は、臨時的任用職員に対する手当等の支給については、地方自治法204条2項及び同法204条の2の要件との関係で、その適法性の有無を早急に調査すべきである。その結果、本件と同様な実態が存する場合には、上記要件を欠く支給であることは容易に知り得るのであるから、そのような違法状態を解消するため条例改正が速やかに行われるべきであって、漫然と条例を改正しないまま手当等の支給を続けるときには、当該地方公共団体の長は、違法な手当等の支給について過失があるとして損害賠償責任が追及されることにもなろう。もっとも、条例改正には、手続と時間を要するものであるが、当該公共団体において、条例改正のために要する合理的な期間を徒過してもなお条例の改正がされず、違法な支給を継続する場合には、もはや過失がないとはいい難く、今後の司法判断において、厳しい見解が示される可能性があることを留意すべきである。 |
先日(3月23日)にも、この判決を踏まえた条例改正について、次のような報道がありました。
そこでこの機会に、条例にて規定していることが確認できました事例をご紹介させて頂きたいと思います。
《先行自治体例》
■【高石市】非常勤職員等の給与等に関する条例(平成22年3月24日条例第1号)
■【岸和田市】非常勤職員等の給与等に関する条例(平成23年3月23日条例第5号)
■【佐久市】佐久市臨時的任用職員等の給与等に関する条例(平成23年3月23日条例第4号)
■【川西市】臨時的任用職員の給与等に関する条例(平成23年3月28日条例第5号)
■神戸市職員の給与に関する条例の一部を改正する条例(第8号議案:平成24年2月24日提出)
提案理由
臨時的任用職員等の給与に係る規定を整備するに当たり、条例を改正する必要があるため。 |
■所沢市一般職員の給与等に関する条例の一部を改正する条例(議案第18号:平成24年2月21日提出)
「議案第18号資料」より
2 事業の概要 臨時職員の増加や勤務内容の多様化等を踏まえ、任用根拠の明確化や賃金制度の適正化等を目的として臨時職員の任用に関する制度の全般を見直すこととした。 |
《参考》
~茨木市臨時的任用職員一時金支給事件・最高裁判決(平22.9.10)、枚方市非常勤職員一時金等支給事件・大阪高裁判決(平22.9.17)を例に~
-上林 陽治-自治総研通巻389号 2011年3月号-