法制執務全般、じょうれいくんの操作、技術的な解説

5.用字・用語、形式 記事一覧

ほうれいくん(法制執務室) > FAQ > 5.用字・用語、形式 > 「やむを得ない事由」とは何か
2007/04/08(日)
カテゴリー : 5.用字・用語、形式

「やむを得ない事由」とは何か

タグ :

【お問い合わせ】

保育所費用徴収規則中の表現について

第○条 市長は、災害その他やむを得ない事由により扶養義務者が保育料を納入することが困難であると認めるときは、保育料の額を減額し又は免除することができる。

とある。
この「その他やむを得ない事由」の内容だが、法令において、具体的に定められているものなのか、それとも、市長が別に定めるのか、別に定めを置くべきなのか。

【弊社見解】

「やむを得ない事由」とは、客観的に、真にやむを得ないものであるかどうかを判断した結果、決まるものであり、法令で具体的に定められているものではないと考えます。
そして、必ず市長が別に定めるものでもありません。(関係省庁等の通達で、何らかの基準を示していることはありえますが、それも拘束力をもつものでなく、一応の参考意見となる程度のものであります。)

では、『客観的に、真にやむを得ないかどうか』を誰が判断できるのかといえば、最終的には裁判所ということになりますが、その都度訴訟をして、裁判所の判断を仰ぐことも現実的ではありません。
このことから、市長が判断することが妥当であると考えます。
この場合の市長の判断は「法規裁量行為」と呼ばれるものであると考えられます。法規裁量行為とは、法令に明確な規定はないが、個別客観的にふさわしい判断がされる場合を指します。つまり裁量行為ではあるが、通常人の予想する判断通りの裁定がなされるものです。
勿論、市長が判断を間違えれば、裁量権の喩越となり、違法となります。

ご質問の市町村様において、公平な市政の確保を担保する必要等の観点から、「やむを得ない事由」に当たるものが何であるかを定めておきたい事情がある場合、当該規則を改正し、【第○条中「やむを得ない事由」を「やむを得ない事由として市長が定める事由」に改める。】等とすることも可能であると考えます。しかしながら、今まで、不都合がなく運用をされているようなら、むしろこのまま、時と場合に応じ、適当に判断するのが自然であるかもしれません。