損害賠償額の確定と議会での議決、専決による報告等について
≪ご質問の内容≫
地方自治法第96条第12号において、議決事件の「法律上その義務に属する損害賠償の額を定めること。」とある。
今回、当市の税務課において、国民健康保険税の賦課に関し、「保健税を不法に搾取した」との市民から異議申し立てがあり、不当利得の返還請求(民法704条に基づく利息を含む)があった。
この件を顧問弁護士に相談した結果、損害賠償として返還することが適切であるとの指導を受け、手続を行うところだが、損害賠償額の確定について、上記地方自治法に基づき、議会の議決(専決による報告)を求める必要があるのか否かご教示願いたい。
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≪弊社見解≫
結論から申し上げますと、議決につきましては必要と考えます。
損害賠償額の確定については、例えば昭和36年11月27日に、
判決により確定した損害賠償請求の額について、さらに第1項第13号の規定により議会の議決を得る必要はない。
との判決が下されています(上記「第1項第13号」とは、地方自治法の第96条第1項第13号を指します)。
これに照らしますと、本件の損害賠償請求額は、判決によって確定されたものではなく、住民との交渉の上で和解に至ったものであるため、自治法第186条第1項第13号の規定に基づいた議会の議決を得ることが必要となります。
ただし軽微な損害賠償等については、地方自治法第180条に基づく指定専決処分を行える旨を定めている自治体様も存在します。その場合はご質問にある、長による専決→議会による議決、という流れで処理を行うことができます。
逆に、当該自治体様の例規において、そのような定めがない場合は、金額の多寡を問わず、議会に諮ることとなります。
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≪資料≫
■一定の件について、長の専決処分に付す旨の議決を得ている事例
・愛媛県新居浜市様の事例
○専決処分事項の指定について
昭和51年5月14日
議決
地方自治法(昭和22年法律第67号)第180条第1項の規定により、市長において専決処分することができる事項を次のとおり指定する。
(1) 訴訟物の価格が100万円以下の訴えの提起、和解及び調停に関すること。
(2) 法律上の義務に属する損害賠償のうち、100万円以下(交通事故に係るものは、自動車損害賠償保障法(昭和30年法律第97号)に規定する保険金額の最高額の範囲内)の額を定めること。
http://www.city.niihama.lg.jp/kouhou/reiki_int/reiki_honbun/ao20601021.html
○専決処分事項の指定について
平成9年9月29日
議決
地方自治法(昭和22年法律第67号)第180条第1項の規定により、市長において専決処分することができる事項を次のとおり指定する。
市有土地、建物及びその附属物の明渡し、賃貸に原因する請求、和解、調停及び訴訟をすること。http://www.city.niihama.lg.jp/kouhou/reiki_int/reiki_honbun/ao20601031.html