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2008/07/02(水)
カテゴリー : 6.法令解釈

送達した書類が返戻された場合

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【お問い合わせの内容】

 本市では、毎年度6月初旬に市・県民税の納税通知書(以下「納付書」という。)を納税義務者に発送している。

 今回1件、ある個人Aより、市長あてに内容証明により、当該市・県民税の納付書が返戻された。開封された封筒と納付書のみで、特に不服申立てをする旨及び受取拒否をする旨など一切の記載がない。

 納付書の発送に際しては、Aの住民登録上の住所あてに発送しており、本人より内容証明が発送されていることから、通常の郵便による送達は完了しているものと思われる。

 地方税法第20条の2で規定する公示送達を行うことも、一つの方法だと考えるが、第1項では、

その送達を受けるべき者の住所、居所、事務所及び事業所が明らかでない場合

としており、難しいと思われる。

 送達は完了しているものと考え、内容証明で返戻された納付書は当方で保管した場合、仮に本人から「内容証明で送り返したのだから、当然受取り拒否をしたということだ。納付書は手元にもないのだから、支払えない。」と指摘された場合どうなるか。

 (1) 返戻された納付書を当市で保管したままで、賦課処分の効力がなくなる等の影響はないか。
 (2) 影響があるとすれば、再送付や交付送達をすべきか。
 (3) また、上記の指摘をされた場合、「送達は完了し賦課処分は成立している」ことを主張する場合、どの法律(地方税法、民法及び民事訴訟法あたりか)のどの条文を根拠とし、対抗すればよいか。

以上、ご教示願いたい。

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【弊社見解】
 ご質問につきましては一般に

いったん有効に書類が送達された以上、たといその書類の送達を受けるべき者がその書類を返れいしても、送達の効力には影響がない(民法九七条一項、昭一七・二・二八大審判)

(『地方税法総則逐条解説』地方税務研究会編 ぎょうせい 2006年 p548-549 )

とされています。その事から、ご質問の(1)効力については影響が無く、ご質問の(2)再送付や交付送達の必要も、無いと考えられます。

(3)根拠とすべき法律等につきましては、上掲書に挙げられている民法や大審院判例の他、昭和29年8月24日及び昭和27年4月25日最高裁判決が挙げられます。当該民法及び最高裁の各判例については、下記「資料」欄及び別紙に挙げましたのでご参照下さい。
 
 なお、法的な解釈についての弊社見解は以上でございますが、実際の対応といたしましては、返戻された方に、敢えてその意図を確認しておく等のことも考えられると存じます。

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【資料】

■民法第97条第1項

(隔地者に対する意思表示)
第97条 隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。

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■最高裁判例2例
◎昭和29年8月24日判決
《事件番号》
昭和26(れ)754
《事件名》
傷害、窃盗、詐欺被告事件
《裁判年月日》
昭和29年08月24日
《法廷名》 
最高裁判所第三小法廷
《裁判種別》 
判決
《結果》 
棄却
《判例集巻・号・頁》
第8巻8号1372頁
《原審裁判所名》
大阪高等裁判所
《原審事件番号》

《原審裁判年月日》

《判示事項》
 議員との兼職を禁じられた公務員が、立候補するためにした辞職の申出の撤回と衆議院議員選挙法第六七条第六項による退職の効果

 公務員任免の効果発生時期と官報による公示

《裁判要旨》
 衆議院議員との兼職を禁じられている公務員が、同議員候補者として立候補するため、一旦公務員を辞する旨の申出をした後、立候補を断念し、一〇日の期間満了前に辞職申出の撤回方を公に申出た場合には、衆議院議員選挙法第六七条第六項による退職の効果は発生しない。 二 特定の公務員の任免の如き行政庁の処分は、特定の規定のない限り、意思表示の一般的法理に従い、その意思表示が相手方に到達した時、即ち辞令書の交付その他公の通知によつて、相手方が現実にこれを了知し、またはその意思表示が相手方の了知し得べき状態におかれた時に、その効果を生ずるものと解すべきであつて、それが官報に登録され、公示されたことによつて、その効果を生ずるものと解すべきではない。
《参照法条》
衆議院議員選挙法9条,衆議院議員選挙法67条6項,国家公務員法61条

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◎昭和27年4月25日判決

《事件番号》
昭和25(オ)18
《事件名》
農地買収計画及び訴願裁決取消請求
《裁判年月日》
昭和27年04月25日
《法廷名》
最高裁判所第二小法廷
《裁判種別》
判決
《結果》
棄却
《判例集巻・号・頁》
第6巻4号462頁
《原審裁判所名》
仙台高等裁判所
《原審事件番号》

《原審裁判年月日》

《判示事項》
行政処分の取消または変更を求める訴の出訴期間の起算日。

《裁判要旨》
訴願裁決書の謄本が郵便により配達された以上、特段の事情のないかぎり、右謄本の配達を受けた日に右裁決のあつたことを知つたものと認めるべく、行政処分および訴願裁決の取消または変更を求める訴の出訴期間は、その日から起算すべきである。

《参照法条》
行政事件訴訟特例法5条1項4項