「準用読替」と「読替適用」
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準用読替と読替適用の違いはどのようなものか。
また、表現上どのような違いがあるのか。
【弊社見解】
<参考文献>
『ワークブック法制執務』(法制執務研究会編 ぎょうせい)(p718)
『分かりやすい法律・条例の書き方』(磯崎陽輔著 ぎょうせい)(p87~96)
『法制執務ハンドブック』(大島稔彦著 第一法規)(p218・219)
「準用」というのは、類似する事象について一々規定を設けることはかえって法規が複雑となるということで、これを避けるためという立法技術上の理由から用いられるのでありますが、反面、準用に伴い必要な修正を加える必要があるので(※1)、規定としては分かりにくくなるという難点があることは否めません。このため、準用条文を当該準用される規定に当てはめるについて読みにくい部分を補足する読替規定が置かれるのが通例であります。
※1 準用には、二つの形があります。一つは、法体系上直接関係を有しない他の法令や条項の規定を一つの部品として借りてきて、それに若干の手直しをして当てはめるものであります。もう一つは、ある対象の範囲が拡大されたときに、その拡大された事象についても、元の対象と同様とするものであります。実際には、法令上、この後者の準用の方が圧倒的に多く、そのため、読み替え不要な準用も圧倒的に多くあります。
「適用」というのは、その規定の本来の目的とする対象に対して規定を当てはめることをいいます。本来の目的とする事象と本質の異なる事象に対して当てはめる場合でも、それについて本来の規定について何らの変更を加えず、そのまま当てはめることができる場合には「準用する」ではなく「適用する」の語が用いられます(※2)。
※2 読替規定は、準用でも適用でも、必要な場合もあるし、必要でない場合もあり、準用と適用を分ける基準とはなり得ないのであります。
そこで、適用についても、準用と同様、二通りの用法があると考えるべきであります。一つは、経過措置の規定でよく用いられるように、その規定がどの事象に対して当てはめられるか明らかにするための用法であります。「その規定の本来の目的とする対象に対して規定を当てはめること」とは、このことを指すものでありましょう。もう一つは、対象の処理を他の規定にゆだねる用法であります。言葉を変えれば、ある対象に他の規定を当てはめるものであります。
なお、適用についても、適用に二つの種類があると言っているものではありません。「ある規定をある対象に当てはめる」という適用の本質に変わりはありませんが、適用が用いられる場面に二通りのものがあるということであります。
■準用読替
「~準用する。この場合において、第○条中「○○」とあるのは、「××」と読み替えるものとする。」
〔参考例〕
○特定特殊自動車排出ガスの規制等に関する法律
(平成十七年五月二十五日法律第五十一号)
(準用)第二十七条
第十九条第二項、第三項、第五項及び第六項並びに第二十条の規定は前条第一項の登録について、第二十一条から第二十五条までの規定は登録特定特殊自動車検査機関について準用する。この場合において、これらの規定中「特定原動機検査事務」とあるのは「特定特殊自動車検査事務」と、第十九条第五項中「登録特定原動機検査機関登録簿」とあるのは「登録特定特殊自動車検査機関登録簿」と、第二十一条第六項中「特定原動機製作等事業者」とあるのは「特定特殊自動車製作等事業者」と読み替えるものとするほか、必要な技術的読替えは、政令で定める。
〔異なる2以上の字句を同時に同一の字句に読み替える場合の参考例〕
○獣医療法
(平成四年五月二十日法律第四十六号)
(往診診療者等への適用等)
第七条 (略)2 第五条の規定は、農林水産省令で定める診療用機器その他の物品(以下「診療用機器等」という。)を所有し、又は借り受けてこれを使用する往診診療者等について準用する。この場合において、同条中「診療施設」とあり、及び「構造設備、医薬品その他の物品の管理及び飼育動物の収容」とあるのは、「診療用機器等」と読み替えるものとする。
■読替適用
→「~の適用については、第○条中「○○」とあるのは、「××」とする。」
〔参考例〕
○独立行政法人スポーツ振興センター法
(平成十四年十二月十三日法律第百六十二号)
附 則第三条 センターの最初の事業年度の第二十一条第一項に規定する事業計画等に関する同項の規定の適用については、同項中「当該事業年度の開始前に」とあるのは、「センターの成立後最初の中期計画について通則法第三十条第一項の認可を受けた後遅滞なく」とする。